教育 2010年

広域科学専攻
進化認知科学
(責任教官:長谷川寿一)言語情報科学専攻
言語情報科学特別講義I
(責任教官:伊藤たかね)
日時・9月30日(木),10月1日(金), 10月5日(火) 10:00~17:00
(日によって授業時間帯が異なるので注意すること)
場所18号館 1階メディアラボ2。
(担当者により適宜教室変更があり得る。その場合は掲示にて、または開講時に指示する。初日の集合場所は上記メディアラボ2である。)
講義概要
21世紀COEプログラム「心とことばー進化認知科学的展開」(2003~2007)は、一つの専門分野にとどまらず、複眼的視点と複数の研究手法に通じた若手研究者の育成を目指し、領域横断的な人間総合科学を構築することを目標とする学際的プロジェクトであった。本年度よりその研究基盤は「進化認知科学センター」として引き継がれている。本講義は、プロジェクト関連メンバーおよびゲスト講師により行われるオムニバス形式の講義である。認知科学の中でも脳科学、言語学、心理学など、複数の分野にまたがる最新の研究成果を、実験実習や演習を交えながら紹介する。履修上の注意
この授業は,9月30日、10月1日、10月5日に実施する。講義内容の詳細等については、このウェブサイトに順次掲載する。なお、これまでに本講義を既に2回(以上)受講している場合は、本年度の受講は認められない(本年度が2回目の学生は可)。

履修登録方法
履修を希望する学生は、以下の3点を厳守して下さい。
(1)以下の方法で仮登録をして下さい。
・所属・学年・学生証番号・氏名
・これまでの本講義の受講歴の有無
・受講歴がある場合は,何年度に受講したか
を明記したメールを、「集中講義仮登録」という件名で、
office_at_ecs.c.u-tokyo.ac.jp (“_at_”は”@”に置き換えてください)
宛てに9月23日(木)までに送付

(2)9月30日(木)の授業(18号館1階メディアラボ2)に必ず出席し、授業実施の時間・場所等についての説明を受けて下さい。

(3)正式な履修登録は、授業終了後、他の冬学期科目を登録する際に忘れないように登録して下さい。

9月30日(木) 10:00~12:00,13:00~17:00

担当:小林由紀(東京大学 進化認知科学研究センター)・池田功穀(東京大学 総合文化研究科)
講義内容:脳波測定は、ヒトの脳から生じる電気活動を記録し観察する方法である。午前は、脳波の基礎知識と測定手法、解析手法について簡単に講義する。午後は4、5人のグループに分かれて、脳活動の計測と簡単な解析を体験する。

10月1日(金)10:00~17:00  

担当:新井学(東京大学 総合文化研究科)・大石衡聴(理化学研究所)・神長伸幸(理化学研究所)
講義内容
1コマ目(担当 新井):
人はどのようにして文を理解しているかをテーマとし、文理解研究における重 要な問題、また過去の研究成果をまとめて紹介する。中でも(1)漸進的処理 (Incremental process)によって起こる解釈の曖昧性、そしてその曖昧性の解消 方法、(2)Garden-path modelに代表されるserial parser とConstraint- based modelに代表されるparallel parserによる言語情報の処理過程における違 い、(3)既に与えられた情報に対するプロセス(integration)と次に来ると 予測される情報に対するプロセス(prediction)の二つが文理解においてどのよ うに働いているか、といったトピックを重点的に扱う。

2コマ目(担当 新井 大石 神長):
言語を理解するときの眼球運動計測実験の体験を行う。具体的には、話し言葉の理解課題および読み理解課題を実施する。そして、課題遂行中の注視点の変化を自分のデータを使って観察する。その際、眼球運動測定や課題実施で注意すべき点を説明する。

3コマ目(担当 神長):
2コマ目で体験した眼球運動計測実験に関して、測定の原理と妥当性を説明する。また体験で得られたデータを材料に具体的な解析手続きを概説する。 さらに、過去の研究を紹介するとともに、眼球運動計測をどのように用いると言語理解過程に関する仮説を検討できるのかを議論する。

4コマ目(担当 大石)
前日の脳波測定実習および本日の言語理解研究の概論で学んだことを踏まえて、脳波を測定することでどのように人間の言語理解能力の解明に貢献する ことができるのかを、実際の研究例を紹介することを通して講義する。特に、眼球運動測定法との対比や、通言語的(cross- linguistic)な比 較を通して、脳波測定を用いた言語理解研究の魅力を伝えることを目標とする。

10月5日(火) 10:00~13:00

担当:高橋麻理子 (東京大学 進化認知科学研究センター)
講義内容:行動生態学の視点に立ち、動物と人間の音声コミュニケーションの特徴について概観する。まず、動物が用いる音声の多様性、その役割や進化について解説する。次に、動物研究と同じ手法で人間の音声を分析・考察した研究をいくつか紹介し、音声解析ソフトを使った実習で、自分の声から音声パラメータを取り出す手続きを体験する。最後に、小鳥の歌の「文法」の研究と、そこから生まれた人間の言語の起源に関する最近の仮説を紹介する。

10月5日(火) 14:00~17:00

担当:松田剛 (東京大学 情報学環)
講義内容:非侵襲脳活動計測法の1つである近赤外分光法(光トポグラフィ)について、その原理や特長、解析方法などを紹介した後、グループに分かれて前頭前野の活動計測を体験してもらう。教科書的な内容だけでなく、実際に計測する際に直面する様々な問題とその対策についても言及する。