- 進化認知科学連続セミナー2004(冬学期)
- 言語学セミナー(冬学期)
- 言語情報科学特別講義1/進化認知科学(冬学期)
- 21世紀COEテーマ講義「心とことば」(夏学期)
●生命認知科学特論XV(養) ●心理学特殊講義(文) | 日時 | 10月6日より、毎水曜4限 (16:20~) | |
場所 | 東大駒場 12号館1225室 | ||
コーディネータ | 長谷川寿一(生命環境科学系、拠点リーダー) | ||
「心とことば」COEでは、冬学期に次のような連続セミナー を企画しました。後期課程の授業(オムニバス形式講義)と相乗りですが、学内の皆様には公開といたします。約50分のトークのあと、30分程度の質疑、そ の後、講演者とのカジュアルな懇親会を予定しています。どうぞ奮ってご参加下さい。 | |||
■第1回 10月 6日 長谷川寿一(COE・心とことば)「イントロダクション」 要旨:新しい世紀に入り、環境・エネルギー問題、人口問題、民族紛争を抱えた人類は存亡の曲がり角にさしかかったといっても過言でない。進化認知 科学(あるいは進化心理学)は、生物としてのヒト、進化的存在としてのヒトという観点から、人間科学を再統合し、人間性がどこから生まれ、どこに向おうと しているかを考える新領域である。ここでは、人文社会科学と自然科学との融合やヒトと類人猿との比較研究がなぜ不可欠かを論じる。■第2回 10月13日 松本直子(岡山大)「進化認知科学と考古学」 要旨:物質文化研究を基礎として人類史の復元を行う考古学は、さまざまなかたちで進化論と深く結びついている。今回は、人類の知能・物質文化・社 会の長期的変化を考えるうえで進化認知科学的視点がもつ意義について、考古学の最近の動向を概説したい。■第3回 10月20日 高橋泰樹(北海道大)「進化神経経済学入門」 要旨:経済学が仮定する合理的意思決定モデルでは説明できない意思決定・行動(利他行動や「近視眼的」異時点間選好など)を人間が示すことが明ら かになってきた。パラドキシカルな人間行動を解明するための進化神経経済学的研究を紹介する。■第4回 10月27日 三中信宏(農業環境技術研)「シンプルって美しい:認知最節約化のための図像と概念」 要旨:知識を体系化(systematize)するという行為は,ときとして複雑な現象をより単純に理解するための多くの思考装置を編み出してき た.生物・言語・写本などの系譜を対象とする広義の体系学(systematics)では,単鎖(chain)・樹(tree)・地図(map)などさま ざまな図像が体系化の手段として用いられてきた.学問分野の壁を越えて体系化のためのツール群が共有されてきたという事実は,それらの背後にある「認知最 節約化」という最適性基準が共有されてきたということを示唆する.現象に関する明示的モデル化を要求する最近のprocess-basedな思考枠の中で さえも認知最適化基準は生き続けていると考えられる.単純性(simplicity)をめぐる歴史的文脈と現代的文脈の糸を縦横に交わすことで,体系化の あり方を論じる.11月 3日 (祝日) ■第5回 11月10日 ■第6回 11月17日 The ability to estimate and differentiate quantities is advantageous to humans as well as nonhuman primates. Several studies have shown numerical competence in various primate species. However, little is known about the underlying mechanisms for numerical ability. This study addressed the degree to which this ability is not only perceptual but also based on mental representations. Three great ape species (bonobos, gorillas and orangutans) were tested in their ability to estimate and compare two sets of small quantities (up to six items). The results suggest that great apes are capable of distinguishing between small quantities when they are visually available at the time of choice and also when the decision is based on memory.■第7回 11月24日 近年、社会的認知の研究は認知心理学のみならず、発達的、適応論的アプローチとも連携して精力 的に進められている。今回のトークでは、チンパンジーを研究対象として、視線認知の発達とその知覚的基盤について私たちが行ってきた一連の実験研究を紹介 する。トピックとしては、類人猿乳児における正視顔選好、視線追従能力の発達、視線刺激を含む社会的手がかりによる注意のシフト、成体チンパンジーにおけ るStare-in-the-Crowd効果、などである。これらの成果をもとに、ヒトとチンパンジーの視線を軸とした社会的認知の類似点と相違点を明ら かにし、その先にある他者理解能力の進化について考察したい。■第8回 12月 1日 私たちの複雑な社会生活を支える社会性を、私たちはどのようにして身につけたのか。そしてそれを可能にする脳の発達基盤とは何なのか。当た り前であるから見えてこない「社会性」の本態を、自閉症という発達障害の病態解明を通して概説する。■第9回 12月 8日 殺人は倫理的に許されない反社会的行為であるが、ヒトを殺人に駆り立てる動機づけは、殺人者だけに固有なものとはいえない。ここでは、主に 性選択理論から予測される殺人パタンを実証的に検証し、殺人行動の普遍性を示すとともに、社会・文化による影響を考察する。■第10回 12月15日 本講義では進化心理学的アプローチによって行われてきた思考研究と、それが引き起こしてきた議論ををレビューすることで、進化的視点を取る ことが、人間の「合理性」に対してどのような見方をもたらすか議論する。■第11回 12月22日 最近の認知発達研究では、文法や自然数の体系といった構造的知識に加えて、物体の運動に関する素朴物理学、ヒトの意図的行為についての素朴 心理学ないし「心の理論」、ヒトの身体や動植物を扱う素朴生物学など、世界のいくつかの側面に関する因果的知識についても、領域固有の生得的制約が働いて いるため、乳幼児が早期に、容易にかつ普遍的にこれらを獲得しうると主張する学者が多い。このトークでは、こうした領域固有の生得的制約の性格やそれを進 化といかに関連づけるかに関する議論を整理したい。■第12回 1月12日 現生人の「人種」分類に生物学的根拠はない。一方、「人種」概念の存在は、西洋の社会的構築物説だけで説明できない。進化生物学、認知科 学、人類学の研究成果を踏まえ、私達の「心」にある「人種」について考察する。■第13回 1月19日 一般的に不安や攻撃という用語は印象の良いものではないかもしれない。しかし生物学に目を向けるとこれらの行動は個体の生存と繁殖戦略にな くてはならない要素である。不安と攻撃がどのように発達していくかを生物学的知見、特に遺伝子と環境の両者から解いてみる。■予備日 1月26日 |
言語学セミナー | 日時 | 2004年11月 8日~12日 10:40-15:30 | |
場所 | 東京大学駒場キャ ンパス 10号館3F 会議室 | ||
講師 | Robert D. Van Valin, Jr. 教授 (State Univ. of New York, Buffalo) | ||
タイトル: ”The Syntax-Semantics-Pragmatics Interface” –Seminars in Role and Reference Grammar–11月8日(月)10:40-12:10 An overview of syntax-semantics-pragmatics interface 13:00-14:30 The layered structure of the clause 14:40-15:30 Discussion 11月9日(火) 10:40-12:10 Lexical decomposition and thematic roles 13:00-14:30 Projection of information structure 14:40-15:30 Discussion 11月10日(水) 10:40-12:10 Linking algorithm and syntactic pivots (i) 13:00-14:30 Linking algorithm and syntactic pivots (ii) 14:40-15:30 Discussion 11月12日(金) 13:00~16:00 Tutorial sessionVan Valin教授は、言語類型論・文法理論・ネイティヴアメリカン言語研究の分野で幅広い活躍をされています。Language, Studies in Language, Natural Language and Linguistic Theory等、主要雑誌にRole and Reference Grammar (RRG) を用いた独自の分析を発表すると共に、Advances in Role and Reference Grammar (1993), Syntax (1997)等の著書を公刊されていま す。また、言語習得、言語の脳科学の方面でも、研究成果を生み出しています。今回はRole and Reference Grammarの基本から最新の動向まで、講義をされます。 <活動報告> RRGは日本では本格的な紹介はまだされていないが、すでに毎年の国際学会も 開かれており、世界各地で言語類型論的なオリエンテーションをもった言語学者たちによって広く支持されている。本学では大堀がVan Valin教授の刊行予 定の新著草稿を、2003-2004年の大学院授業において講読した。学生も各自の プロジェクトをもち、基礎を確固たるものとしてから行った企画であったた め、質問は質量ともに通常の講演会を大きく上まわり、理論の重要な修正案が フロアから出されることもしばしばであった。同時に、学生個々のプロジェク トに対しても有意義な示唆がなされ、実り豊かなセミナーであった。 | |||
問い合わせ先 | tohori@boz.c.u-tokyo.ac.jp [言語情報科学・大堀壽夫] >>ハンドアウ ト(pdf) |
冬学期 (大学院総合文化研究科対象)
言語情報科学特別講義1 進化認知科学 | 日時 | 平成 16年度 9月27,28,29日 (集中講義) | |
場所 | 東京 大学駒場キャンパス | ||
コーディネータ | 長 谷川寿一(生命環境科学系、拠点リーダー) | ||
〔内容〕 本講義は、21世紀COEプログラム「心とことば―進化認知科学的展開」の大学院向け授業である。本COEでは、一つの専門分野にとどまらず、複眼的視点 と複数の研究手法に通じた若手研究者の育成を目指し、領域横断的な人間総合科学を構築することを目標に掲げている。 この科目では、以下の諸領域の最新の研究成果に関する講義と、それぞれの領域の研究法の開設・演習を組み合わせて、異分野交流をはじめる手がかりを提供す る。 | |||
言語の認知科学入門 (9月27日9:30~) 担当:伊藤 たかね 場所:3号館113教室(生命・認知科学科講義室) 1コマ目は人間の言語の特徴をごく概略的に見た上で,人間の言語使用に関わる心内・脳内メカニズムについて,どのような考え方があるかを概説し,言語の認 知科学的・脳科学的見方への導入を図る。2コマ目は,人間が無意識のうちに獲得している文法知識をデータから引き出す言語分析の実際を,小グループに分か れて体験する。生物音響学入門 (9月27日2時~) 担当:角 恵理 場所:3号館113教室(生命・認知科学科講義室) 動物達が用いる音声コミュニケーションの多様性(発音メカニズム、認知メカニズム、音響構造)を紹介し、音声が担う役割について解説する。また、動物の音 声の進化を考える上で重要となる生物学的概念を紹介し、動物の音声の進化学的考察について解説する。後半では、コオロギの音声を題材として、実際に分析ソ フトを用いて音声分析を行い、音をデータ化して比較する一連の手続きを体験する。自然言語処理入門 (9月28日10:30~) 担当:加藤 恒昭 場所:3号館113教室(生命・認知科学科講義室) 日本語などの自然言語テキストを計算機で処理・理解するための自然言語処理技術の概要とその応用システムについて解説する.特に,文字列を単語(形態素) に分割する形態素解析技術と多量のテキストから必要なものを取り出す情報検索技術を中心に説明し,各人の研究分野での利用を考える.時間中はデモを含んだ 講義形式とし,レポート課題に実習的な要素を含めるようにする.音声知覚心理実習 (9月28日2:40~) 担当:川島 尊之 場所:3号館113教室(生命・認知科学科講義室) 音声の知覚心理学について述べる.具体的には音声の音響的な特性,音声知覚の諸特徴,音声知覚情報処理過程について簡単なデモと解説を行い,さらにフリー ソフトウェアによって可能な音声の分析・編集作業について,実演しながらその特徴と限界を述べる予定である.認知神経科学実習 (9月29日10:30~) 担当:平井 真洋・福島 宏器 場所:17号館1階COEラボ 認知神経科学では、特定の情報処理に対応する脳活動を計測し、データを積み重ねることによって、人間がおこなっている情報処理活動のメカニズムを探る。今 回は、この研究手法の背景にある考え方や主な手法を概説したあと、具体例として脳波計測をとりあげ、数人の受講者の神経活動を実際に計測し、計測から解析 までの一連の流れを体験する。 |