進化認知科学研究センター
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活動内容Top活動内容2004

詳細
 
第一回
日韓対照研究会
日時 2004年10月9日(土)
2004年12月11日 
13:30-17:00
場所 東京大学駒場キャンパス
10号館3F 会議室
 「日韓対照研究会」は、日本語と韓国語の対照研究を目的とし、データの記述に加え、言語一般に通ずる原理の解明およびその応用などを目指し、様々な方向性を模索するための試みです。
 発表・講演は日本語で行われ、韓国語の知識がない方でも参加していただける内容となっておりますので、韓国語ご専門の方のみならず、韓国語にはあまりなじみがない、という方も、お誘い合わせの上、奮ってご参集ください。
日時:2004年10月9日 13時30分〜17時
13:30 − 14:10 学生発表1
「韓国語の「状態変化」を表す補助動詞jida−受身・自発とのつながり−」 円山拓子
14:10 − 14:50 学生発表2
「韓国語の形式動詞「hata(する)」に関する一考察」 尹盛煕
15:00 − 16:30 招待講演
「韓国語における被動形式の機能と起源に関する類型論的考察」 鷲尾龍一
16:30 − 17:00 質疑応答

講演者の鷲尾先生はボイスやテンス・アスペクトなどについて、英語、 オランダ語、日本語、朝鮮語、モンゴル語など様々な言語を比較対照しながら、その普遍性と個別性について活発に研究を進めておられ、西洋諸言語だけでなく東洋諸言語についての理解も深い、日本を代表する言語学者です。
講演者
内容
鷲尾龍一 (筑波大学)
多くの統辞論的類似性を共有する韓国語と日本語にあって,被動表現の形式と機能には際だった相違点が見られる.従来より指摘されている自動詞の被動化可否などは,より一般的な《排除被動》の可否に還元できるものと考えられるが,他の言語特性への還元を容易には許さない類の差異も存在する.韓国語における《被動形式の多様性》は,そのような特質の一つである.すなわち,(1) -i- (-hi-, -li-, -ki-),(2) ci-ta,(3) toy-ta,(4) pat-ta,(5) tangha-taなどに基づく被動表現は,日本語では接辞 -rare- に基づく単一の形式に収斂するのであるが,韓国語という言語が被動形式を細分化させた理由を原理的に説明するのは,現時点では困難であると言わざるを得ない.したがって,この多様性自体は所与のものとして認めることになるが,(1)〜(5)の諸形式は,それぞれの成り立ちを反映した固有の性質を備えているため,これらの形式を対比させることにより,被動の《形式》(あるいは《構成》)に由来する特性を明らかにするという,日本語のような言語では行ないにくい研究が韓国語では可能となる.

本発表では,上記(1)〜(5)の諸形式のうち,ci-ta 被動文とtoy-ta被動文のみに見られる性質Pを抽出し,これがゲルマン諸語の被動表現にも共通する性質であることを示す.その上で,Pが特定の被動構成を反映している可能性について論じ,(1)や(4)/(5)がPを欠くという事実が,被動構成の違いに由来するものであることを示す.一方,接辞 -rare- に基づく日本語被動文は,韓国語の接辞被動と同様にPを欠く構文であるが,以上のような観点からすると,これは日本語被動文がゲルマン諸語の被動表現とは本質的に異なる構成であることを示唆するものであり,接辞 -rare-の起源に関して広く行なわれている語源論に対し,重要な問題を提起することになる.
担当者 責任者 生越直樹     世話役 尹盛煕
問い合わせ先 youn@phiz.c.u-tokyo.ac.jp (@を半角にして送信してください)