進化認知科学研究センター
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平成16年度(2004年)   夏学期冬学期

 夏学期 (教養学部前期課程対象)
21世紀COEテーマ講義
「心とことば」
日時 平成16年度夏学期 月5限
場所 東京大学駒場キャンパス
13号館 1331教室
コーディネータ 長谷川寿一(生命環境科学系、拠点リーダー)
〔内容〕
平成15年度から、東京大学21世紀COEプログラムとして「心とことば−進化認知科学的展開」が、駒場キャンパスをベースとしてスタートした。本プログラムでは、人間性の核心をなす「心とことば」に焦点をあて、認知科学、言語科学、進化人類学、進化心理学、遺伝学、小児科学、情報科学などの連携による学際融合研究を行う。
「普遍性と多様性」をキーワードに、「心とことば」の諸相について「機構」「機能」「発達」「進化」の各レベルから総合的理解を深め、21世紀型の人間統合科学の構築を目指す。
本講義では、研究拠点形成プログラムの事業担当推進者および関連領域のゲストの研究活動を紹介しながら、このCOEの全体像を前期課程の諸君に伝えてみたい。講義は各回完結のオムニバス講義で進行する。
〔評価方法〕
単位の認定(「合」評価)は、毎回の授業の終わりに書いて提出するミニレポートが9回またはそれ以上あることを要する。
第1回 4月19日 イントロダクション 長谷川 寿一( 総合文化研究科生命環境科学系)
21世紀COE「心とことばー進化認知科学的展開」が目指すもの
人間は生物学的存在としてみるとチンパンジーと同じ大型類人猿の一種にすぎない。と同時に、われわれが「特別な」類人猿であることも事実である。では、ヒトという生物を特徴づける心やことばを我々は「なぜ」「どのように」身に付けるに至ったのか。進化学、人類学、認知科学、神経科学、言語科学の最新知見を結集して考えていきたい。

第2回 4月26日 石田 貴文(理学系研究科生物科学専攻)
ヒトの生物学的位置づけ
人類の環境への適応、人類の多様性と小進化、民族と疾病、ヒトと他の霊長類との種差等についてフィールドとラボをあわせた研究をおこなっています。そこで、小さいほうでは分子から、ウイルス、細胞、そして大きいほうではヒトやサルの集団まで扱います。材料集めに国内外のフィ−ルドへ、そして作業は実験室でという流れです。

第3回 5月10日 岡ノ谷 一夫(千葉大学文学部、先進科学プログラム)
言語起源の生物学
言語を単一認知モジュールではなく、複数の下位モジュールの統合により成立する機能であると考えることで、言語起源の生物学的研究が可能になる。時系列信号の進化と文法の発生、意味と恣意的信号との連合の2点について、生物学的に妥当な仮説を提案する。

第4回 5月17日 佐藤 隆夫(人文社会系研究科基礎文化研究専攻)
視覚の能動的な働き
人間の視覚、聴覚に関する感覚、知覚レベルの研究を行っている。本業は、運動視、立体視に関して、心理物理実験から得たデータを基に、メカニズムのモデルを作る仕事だと思っているが、最近では,表情の知覚,視線の知覚などの柔らかいトピック、さらにはバーチャルリアリティーなどにも取り組んでいる。

第5回 5月24日 榊原 洋一( 東京大学付属病院)
子どもの言葉の発達とその異常
高次脳機能の頂点に立つ言語をヒトが獲得したのは、人類の進化の歴史でいえば、比較的最近のことであると考えられている。言語機能のなかでも、文字の使用は特に新しく、人間の脳は文字使用については初心者といってよい状態である。しかしヒトの子どもは、そうした高次脳機能を通常は容易に身につける。またさまざまな発達の障害により、こうした言語獲得がうまくできない子どもたちがいる。そうした子どもたちの臨床像と脳科学的知見について解説する。

第6回 5月31日 開 一夫( 総合文化研究科広域科学専攻)
脳と心の発達:赤ちゃん学の視点
認知科学,特に「自己」の発達過程に関心がある.具体的には,発達認知神経科学アプローチに基づいて研究を行っている.発達認知神経科学とは,「脳」と「心」の成長・発達を関連づけ,さまざまな認知機能に潜むメカニズムについて発達的に解明する分野をさす.実際の研究対象はヒト乳幼児から成人まで幅広く,研究方法も行動実験に加えてEEG/ERPやNIRSを用いた脳活動計測など多岐にわたる.

第7回 6月7日 丹野 義彦(総合文化研究科広域科学専攻)
自分のこころからよむ異常心理学
日常生活や精神科の臨床場面でよくみられる精神病理(不安・抑うつ・妄想的思考など)を研究対象としています。あまり難解でない実証的で科学的な異常心理学を構築していきたいと考えています。基礎的な研究(進化心理学や数理心理学)と臨床心理学の橋渡しをするような研究を心がけています。

第8回 6月14日 大堀 壽夫(総合文化研究科言語情報科学専攻)
世界の言語の分布は何を語るか?
言語学の中でも、意味論および言語類型論と呼ばれる分野に関心をもっています。言語の多様性はどこから来るのか、またそうした多様性を貫くような、言語の構造や機能についての一般的原理はあるのか、といったことを根本的な問いかけとして研究をしています。そして世界中の言語形態の分布から、「認識のマップ」とでも呼ぶべきものを抽出できたらと考えています。

第9回 6月21日 萩原 裕子( 東京都立大学人文学部)
文処理の脳内メカニズム
言葉は古くから脳で処理されていることが知られている。しかし,脳のどの部 位で言葉のどのような側面が,いつ,どのように処理されているのかは,長い間不明のままであった。本講義では,言語学,言語心理学の立場から,文処理の脳内メカニズムについて,脳機能イメージング研究による最新の知見を紹介する。

第10回 6月28日 矢田部 修一(総合文化研究科言語情報科学専攻)
自然言語における意味計算のメカニズム
本講義は、形式意味論と呼ばれる分野で得られた知見を紹介するものです。言語を使いこなせる人の頭の中には、単語一つ一つの意味に関する知識だけでなく、単語を組み合わせてフレーズなり文なりを作った場合に、そのフレーズ・文の意味は、単語の意味をどのように組み合わせることによって計算されるか、という問題に関する知識も存在しているはずです。この2種の知識のうちの後者を対象とする研究分野が形式意味論です。

第11回 7月5日 田中 久美子( 情報基盤センター図書館電子化研究部門 情報理工学系研究科数理情報学専攻)
今コンピュータにできる言語処理
○計算言語学: 言語の数理的構造のモデル化と、モデルを計算機上に実現する際の基本アルゴリズムの構築。
適応的確率モデル、言語構造の計算論的モデル、言語の解析手法
○自然言語処理: 計算言語学を基盤とする実動システム
言語インターフェース、対話システム、Webからの多言語情報抽出、言語学習支援システム

第12回 7月12日 大津 由紀雄( 慶應塾大学言語文化研究所)
言語の個体発生
専門は言語の認知科学(生成文法)です。言語はヒトという生物種に固有かつ均一です。その言語の窓をとおして、こころ(mind)の構造と機能を探ろうというのが言語の認知科学です。今回は、言語の個体発生(言語獲得)を取り上げます。言語の個体発生はどのような機構によって可能となるのか。その機構が機能するためにはどのような経験が必要か。などの問題について考えます。

第13回 7月20日 (火曜日・予備日)
>>講義概要(pdf, 187kb)
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