東京大学21世紀COEプログラム 心とことば−進化認知科学的展開
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COE研究員

濱崎裕子 (HAMASAKI Yuko)

【所属】 吉川研究室
【研究紹介】 ことばや心の宿る場としての“脳”は、生命活動において、 生理的、社会的に重要な役割を果たしているにもかかわらず、 未だ解明されていないことが多く、その機能を理解するためには、 分子レベルから組織、器官あるいは個体レベルにいたるまで幅広い視点からの解析が必要である。 本研究は、カニクイザル脳における発現たんぱく質の網羅的解析(プロテオーム解析)を行うことにより、 脳の機能を解明していくことを目的としている。 カニクイザル脳のプロテオーム解析は、2次元電気泳動法で、タンパク質を分離し、 個々のタンパク質を、質量分析計を用いて同定する方法 (2DE-MS)と、タンパク質混合溶液をプロテアーゼで処理し、 得られたペプチド断片混合液を液体クロマトグラフィー法で、 分離・精製し、質量分析計で同定する(LC-MS/MS)、いわゆる、ショットガン法を使用し、 いずれも、ディファレンシャルディスプレー法による解析を行っている。 また、約1000種類のヒトモノクローナル抗体を用いてウェスタンブロット法を行う、 PowerBlot法も取り入れ、脳内に発現しているたんぱく質の変化について網羅的な解析を行っている。 さらに、チンパンジー、オランウータンなど、大型類人猿の脳組織のプロテオーム解析を行うことにより、 進化の過程における、脳内発現たんぱく質の変化についても検討していきたい。

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角(本田)恵理 (SUMI Eri)

【所属】 長谷川研究室
【研究紹介】 専門分野は、音響生物学、進化生態学で、動物の音声コミュニケーションを幅広い興味を持って研究中です。 音を使ったコミュニケーションを行う動物達はヒトを含めて複数の分類群にまたがって数多く存在しています。 私はこれまでに昆虫(エンマコオロギ類、キリギリス)、カエル(ニホンアマガエル)、魚(ドンコ、イシドンコ)、 小鳥(ジュウシマツ、コシジロキンパラ)、ゾウ(アジアゾウ)などさまざまな動物の音声を研究してきました。 複数の分類群に属するいろいろな種の音声コミュニケーションを研究することによって、共通点と相違点を明らかにし、 音声コミュニケーションの進化を考察していきたいと考えています。現在、特に注目しているのは、 近縁種間での音声コミュニケーションの比較です。それぞれの種が用いる音声の特徴や伝える情報を調べた上で、 近縁種間での音声コミュニケーションの違いを生息環境 (物理的環境のみではなく同所的に生息する他生物の存在によって成り立つ生物的環境を含む) や繁殖様式の違いとどのように関係づけることができるのかを調べ、 また、種分化に関わってきたであろう繁殖シグナルとしての音声信号の分化を系統関係に基づいて考察し、 進化プロセスに思いを馳せています。いずれ、複数の分類群にまたがって音声コミュニケーションの進化を考察できることを目指しています。

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戸次大介 (BEKKI Daisuke) 個人HP

【所属】 矢田部研究室
【研究紹介】 私は自然言語のモデル化を通して、人間の思考が持つ代数的な構造を明らかにすることを目指しています。 具体的には、組み合わせ範疇文法 (Combinatory Categorial Grammar (CCG): Steedman(2000))による統語論と、 型付き動的論理(Typed Dynamic Logic(TDL): Bekki (2000))による 意味論を組み合わせた文法理論を仮説として提示し、 理論言語学の諸問題の分析を通して、反証と修正を繰り返しています。 その際、形式的に厳密な記述を用いることが、理論の反証可能性を確保し、 また数学的な演繹により異なった視点を得るための方法論であろうと考えています。
 この方法論は、自然言語に「真のモデル」が存在する、 という仮定に基づいています。近年の自然言語処理・計算言語学では、 「真のモデル」の存在が悲観視されており、 自然言語は必然性がなく移ろいやすい規則の寄せ集めである、 という見方が広がってきているように見受けられます。 その背景には、生成文法、形式意味論といった現在の理論言語学研究が、 扱う現象毎に次第に細分化されてきており、特定の現象に対する洞察の深みと、 理論全体として扱える現象の広さが両立しにくい、という現状があります。 しかし、本研究の文法理論の実装は、Penn Treebankコーパス中の実テキストに対して、 九割近くの文を型付き動的論理による意味表示に変換することに成功しています。 これは型付き動的論理が談話意味論の記述力を持っていることを鑑みれば高いカバレッジであり、 文法理論で用いている高階のデータ構造が、 自然言語の一見複雑な振る舞いをうまく単純化していることにより可能となったものです。 そのようなデータ構造の存在は、「真のモデル」が存在することを示唆しているとも考えられます。
 我々が自然言語の「真のモデル」に接近するにつれて、 哲学の根元である 存在論、認識論に新たな視点がもたらされることになるでしょう。 なぜならば、それらの問題の難しさとは、問題に取り組むこと自体が言語を用いた活動である為に、 理論自体と、それについて述べる哲学者が、相互依存してしまうことにあるからです。 自然言語のモデルが言語表現と意味の関係を客観的に捉えるものであるならば、 それは哲学的問題と哲学者の間の絡み合った関係を解きほぐすための視座を与えてくれるのではないかと考えています。

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高橋泰城 (TAKAHASHI Taiki)  個人HP

【所属】 長谷川研究室
【研究紹介】 "行動神経内分泌学、神経経済学、 社会行動の神経科学 (特に社会的認知および経済学的意思決定を制御する神経ホルモンの研究)
Selected publications:
Ohmura Y, Takahashi T, Kitamura N “Discounting delayed and probabilistic monetary gains and losses by smokers of cigarettes”, Psychopharmacology 2005 Nov;182(4):508-515.
Takahashi T ""Loss of self-control in intertemporal choice may be attributable to logarithmic time-perception."" Medical Hypotheses (2005) 65(4):691-693.
Takahashi T, Ikeda K, Ishikawa M, Kitamura N, Tsukasaki T, Nakama D, Kameda T. “Interpersonal trust and social stress-induced cortisol elevation”. NeuroReport (2005) 16:197-199.
Takahshi T. “Social memory, social stress, and economic behaviors”. Brain Research Bulletin (2005) Nov 15;67(5):398-402. Takahashi T “Cortisol levels and time-discounting of monetary gain in humans”. NeuroReport (2004) 13:2145-2147.
Takahashi T, Ikeda K, Ishikawa M, Tsukasaki T, Nakama D, Tanida S, Kameda T. ""Social stress-induced cortisol elevation acutely impairs social memory in humans.”Neurosci Lett. (2004) 363:125-130.
Takahashi T, Kimoto T., Tanabe N., Hattori T., Yasumatsu N. and Kawato S. “Corticosterone acutely prolonged N-methyl-D-aspartate receptor-mediated Ca2+ elevation in cultured rat hippocampal neurons.” J. Neurochem. (2002) 83(6):1441-1451. "

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久保寺俊朗 (KUBODERA Toshio)

【所属】 村上研究室
【研究紹介】 私の専門は視覚心理学です。 視覚心理学の目標はものを見る仕組み(視覚系)を明らかにすることです。 視覚系の初期段階は, 視野全体を隈なく処理することができるように配置された複数の検出器で成り立っています。 そして, 個々の検出器は視野内の比較的狭い範囲の情報だけを処理することが知られています。 しかしながら,違う場所を処理する検出器の間にある情報のやりとりによって説明できる知覚現象も報告されています。 したがって,われわれの知覚現象を説明するためには, 複数の検出器間にある繋がりを知る必要があります。 私はこのような検出器間の情報伝達の仕組みを主に調べてきました。

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旦直子 (DAN Naoko)

【所属】 開研究室
【研究紹介】 私は修士課程に在学している頃から赤ちゃんの認知発達に興味を持つようになり、 院生時代は乳児の素朴物理学の獲得に関する研究、 つまり赤ちゃんがどのように外界の物理法則を理解していくようになるのかを明らかにしようとする研究を行っていました。その後ポスドクになってからは乳児における映像メディアの認知発達過程を研究テーマとしています。ここ数年、乳児のテレビ視聴時間の増大に伴い、 幼い子どものテレビ視聴に関する是非が社会的テーマとして関心を集めています。 しかし実証的なデータはほとんどなされておらず建設的な議論に至っていないのが現状です。 このような状況を打開すべく乳児のメディア認知に関する基礎的データを地道に集めていきたいと思っています。 現在は主に行動指標のみを用いて実験を行っていますが、今後は脳計測などの方法も取り入れていく予定です。

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小林由紀 (KOBAYASHI Yuki)

【所属】 伊藤研究室
【研究紹介】 言語処理、特に単語処理、統語処理において作動記憶によってどのような処理が行 われているのかを修士課程より研究しています。人間の記憶容量は、(私たちが思っ ているよりも実は)とても小さいものです。その限られた記憶容量や処理能力をどのように使って、 言語処理のような複雑な認知を行っているかに興味があります。 現在行っている研究では、 作動記憶容量によって統語処理の方略に違いがあるのか どうかを検討しています。処理に記憶的な負荷がかかる「かき混ぜ」文を用いて、 記憶容量が大きい人と小さい人とではどのように読み方が異なるのかを調べています。 現在のところは行動実験しか行っていませんが、今後は事象関連電位計測も行う予定です。  また、伊藤たかね教授らとの共同研究として、日本語の名詞化に関する実証的研究を行っています。 日本語形容詞の名詞化については、 演算処理による語形成とネットワーク的記憶による語形成の2つのタイプが存在すると言われています。 行動実験においては既にこの仮説を支持する結果が得られていますが、 昨年度は事象関連電位を指標にした実験を行いました(結果は解析中)。 更に、昨年度よりCOEの融合研究として「手話プロジェクト」を立ち上げました。 このプロジェクトでは、手話の理解と身体運動の理解との関係性、身体運動の記憶、 手話習得などが研究テーマとなっています。

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大江朋子 (OE Tomoko)

【所属】 繁桝研究室
【研究紹介】 対人情報の自動的な処理と統制的な処理について研究している。 特に、ステレ オタイプ(ある人たちをどう思うかについての認知)に関心がある。 ステレオタイプは社会を通して根強く形成されており、 対人情報を処理する際に自動的に利 用されるが、利用している当人はその存在を自覚できないことも多いようだ。 本人も自覚できないステレオタイプを、プライミング課題、潜在連合テスト(IAT)、アイトラッカーなどの心理学の道具を用いて測定する。 これらの課題を終えると、自分にこんなにステレオタイプがあったのかと驚きながら納得する実験参加者もいる。現在、(1)このようなステレオタイプに含まれる感情成分と認知成分のどちらが優先的に処理されるのか、 (2)他者への共感性の程度に応じてステレオタイプ が緩和されるのか、 (3)ステレオタイプに文化、性別、集団所属性の違いが見られるのか、 (4)社会規範や対人関係を意識してステレオタイプを制御することが、 ステレオタイプの自動的な影響を強めることになるのかを検討している。

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高橋麻理子 (TAKAHASHI Mariko)

【所属】 長谷川研究室
【研究紹介】 私はキジ目キジ科の鳥、インドクジャク(Pavo cristatus)の配偶者選択について研究しています。 視覚的な性差の大きなインドクジャクでは、 オスの視覚的な特徴(目玉模様のついた飾り羽など)を手がかりにメスが配偶相手を選ぶと考えられてきましたが、 長谷川研究室の長期調査の結果、飾り羽よりも求愛音声が重要であることがわかってきました。 COEでは、オスの求愛音声の機能を実験的に確かめることと同時に、 求愛音声や飾り羽を制御する性ホルモン、キジ科の近縁種の繁殖生態の調査を通して、 求愛音声や飾り羽の‘進化’の謎に挑んでいます。 ところで、クジャクのようにオスが集まってメスに求愛することを‘レック’といいますが、 女性の加わった男性の会話集団にレックと同じ機能が含まれているのではないかと考えた研究者がいます。 異性間性淘汰は人間の言語の進化に関わった要因の1つだと考えられていますので、 人々の自然な会話のフィールドワークも始めています。

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宮崎美智子 (MIYAZAKI Michiko)

【所属】 開研究室
【研究紹介】 テーマ「幼児における自己映像認知の発達」 自己映像認知に関する問題を発達的観点から研究しています. 自己映像認知とは 鏡やビデオなどに映った自己イメージが自分であることを認められる能力のことで、 ヒトと一部の類人猿にしか認められないといわれています. この能力について探究することを通じて、 自己意識や他者の認識の問題にアプローチしたいと思っ ています. 博士課程では自己映像認知の能力を発現させる要因を探るため, 自己身体と自己 映像間の時間的同時性および空間的一貫性に関してシステマティックな操作を行い、 自己映像の認知に及ぼす影響を実証的に検討してきました. (一般の方向けの研究紹介がこちらにあります。 「研究紹介」−「これまでの赤ちゃん研究の成果」とお進みください。) 今後は自己映像認知の獲得プロセスに関する認知的な背景について明らかにしていきたいと思っています。

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植月美希 (UETSUKI Miki)

【所属】 佐藤研究室
【研究紹介】 専門分野は言語心理学、文理解。 複数の解釈の可能性が存在する「構造的曖昧文」を読んだ時に、 複数の解釈の曖昧性に気付いて解釈に迷うということはなく、 大抵の場合は1つの解釈のみを得るということが知られています (例えば、「女の子が絵本を持って走っている男の子を追いかけています」という文には、 「女の子が絵本を持っている」「男の子が絵本を持っている」という2つの可能性が存在します。 しかし、成人では、「男の子が絵本を持っている」という解釈が好まれることが分かっています)。 この現象は、我々の文処理メカニズムの選好性を示しているものと考えられます。 そこで、このような日本語構造的曖昧文用いて、どのような情報が文解釈の決定に寄与するのかを検討し、 我々の文理解メカニズムについて探っています。 また、精神物理学的手法を応用し、文表象の特性についての検討も行っています。

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伊藤匡 (ITO Masaru)

【所属】 長谷川研究室
【研究紹介】 主な研究内容はサバン症候群の認知機能です.サバン症候群はnが少ないこともあって, ケースワーク的な研究になってしまいますが,元来自閉症の一群とされていることもあり, 自閉症の認知機能も含めた研究に広げています.現在本研究に参加してくださっているサバン症候群の方は2名いらっしゃいますが, どちらもカレンダー計算を得意としていますので,数認知や視覚情報処理, また記憶のパラダイムや脳科学的手法に関心をもって研究しています. またあわせて自閉症の生涯発達ということにも興味をもち, ライフストーリー研究など質的研究手法もとりいれています. もともと専門が臨床心理学ですので, 現場での臨床と実験室での研究の双方を視野に入れながら, 自閉症を対象とした広く実践的な研究を行っていきたいと考えています.

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岩井智彦 (IWAI Tomohiko)

【所属】 生越研究室
【研究紹介】 韓国の、主に先天性のろう者の間で使用・伝承されている韓国手話を研究している。 自然言語としての手話は、国家(あるいは地域)ごとに異なっている場合が多いが、 韓国手話と日本手話に関しては、その類似性が経験的によく知られている。 類似の理由は、韓国における聾教育が、 植民地支配下で日本人主導によってはじめられたことにより、 日本手話ないしはそれから強く影響を受けた手話が、 当時の被支配地域である「朝鮮」のろう者の使用言語として広がったためであると考えられる。 ところで両手話の類似性に関しては、語彙に関する研究がこれまでいくつか見られるが、 文法構造に関しては、今のところほとんど研究されていない。 そこで、今日までの日本手話の記述研究、 とくに市田泰弘氏らの研究成果を参考にし、日本手話と韓国手話における文法項目、 特に、手指によらない動作の様相や振る舞いを対照・分析することによって、 日本手話と韓国手話における文法構造、その類似性および相違の一端について明らかにしたいと考えている。

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小森和子(KOMORI Kazuko)

【所属】 伊藤研究室
【研究紹介】 私は、二言語併用者がどのようなメンタルレキシコン構造を有しているのか、第二言語の単語をどのように認知処理しているのか、また、第二言語での処理過程に第一言語のレキシコンがどのように作用するのか、ということを、第二言語習得、日本語教育、心理言語学、対照研究等の知見から、学際的に研究しています。私は、長年、外国人留学生に日本語を教えるという仕事に携わっており、第一言語の他に日本語を第二言語として習得した外国人留学生のメンタルレキシコン構造が一体どのようになっているのか、ということに興味を持ち、こうした研究に取り組むことになりました。博士論文では、中国語を第一言語とする日本語学習者が、中国語にも日本語にもある同形語を認知した際、中国語と日本語のレキシコンがどのように作用するのかを、書字形態と意味の活性化という点から、実験により分析しました。今後は、音声の活性化についても分析を進め、二言語併用者の単語認知処理過程をより詳しく見ていきたいと思っています。

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杉森絵里子 (SUGIMORI Eriko)

【所属】 丹野研究室
【研究紹介】 私は「ある出来事を実際に行なったか否か」を判断する過程(アウトプットモニタリング)に興味を持ち、博士論文を書きました。現在は、博士論文を書くまでに行なってきた基礎研究を、精神病理学という応用研究にいかすことを目標とした研究をすすめています。例えば、統合失調症患者に多く見られる症状である、「幻聴」は「自分の発話を外部から聴こえてきた声だ」と判断する際のエラーだと捉えることが出来ます。なぜ、自分が実際に発話しているにもかかわらず、「自分は発話していない」と判断するのか、なぜ、外部から声が聴こえていないにもかかわらず、「外部から声が聴こえる」と判断するのか、その認知メカニズムについて検討しています。実際には、大学生を対象とした研究を行なっています。幻聴傾向が高く見られる群と、幻聴傾向があまり見られない群に分類し、2グループ(幻聴傾向高群 vs. 幻聴傾向低群)の認知メカニズムの違いを検討しています。統合失調症の発病は20代に多いと言われています。そのため、ちょうどその時期にあたる大学生を対象とした研究を行なうことは、非常に有意義であると考えています。将来的には、統合失調症の発病を未然にふせぐことができるような、認知療法における治療を開発することを目標としています。

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高雄さとみ (TAKAO Satomi)

【所属】 石田研究室
【研究紹介】 研究テーマは「潜伏感染ウイルスを用いた社会ストレスの評価」です。わたしたちがストレスと無縁の生活を送ることは容易ではなく、近年ではうつ病や慢性疲労症候群などストレスから生じる疾患が社会問題になってきました。ストレスが身体に与える影響についての研究は進んでいますが、内分泌系に関する研究に比べて免疫系の研究は端緒を開いたばかりです。通常、宿主細胞あるいは生体と共存状態を保っている潜伏感染ウイルスは、宿主の免疫能が低下すると再活性化することが知られています。これまでの報告からウイルスの再活性化は試験前の大学生や飛行中の宇宙飛行士でもみられ、ストレスによって誘発された免疫系の撹乱によるものと推察されました。ヒトと同様に社会性をもつチンパンジーも多くの環境要因に曝されていると考えられ、彼らがストレスをどのように捉えているか興味深いところです。そこで、社会ストレスに対するチンパンジーの応答を免疫学的に解明するため、非侵襲的方法で採取した生体試料を用いて潜伏感染ウイルスの再活性化をモニターしています。

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宇野良子 (UNO Ryoko)

【所属】 伊藤研究室
【研究紹介】 文の成立に発話主体がどう関わるか、という問いは極めて認知的な問題設定であるにも関らず、認知言語学ではあまり注目されてきませんでした。私は認知言語学のアプローチで、「文のタイプ」に関わる発話者の行為とはどのようなものか、ということを考察しています。そして、それは発話の場を話者が聞き手とどのように共有するか(広い意味での「ジョイント・アテンション」)という認知的基盤から説明されるのだという仮説を立てて、コーパスの分析、認知実験、コンピュータ・シミュレーションを通じて検討しています。現在用いられている文法のメカニズムを解明することに加えて、どのようにしたら身体性から言語が創発するか、可能な言語進化の道筋を解明することを目指しています。

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