東京大学21世紀COEプログラム 心とことば−進化認知科学的展開
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拠点リーダーご挨拶

長谷川寿一
(総合文化研究科・広域科学専攻)

  人類は、いつ、なぜ、どのように特別な類人猿になったのか

  ほとんどの方々の直感に反するかもしれないが、チンパンジーからみてもっとも遺伝的に近縁な 動物は、ゴリラではなくヒトである。これは、近年の進化人類学の大きな成果だ。カリフォルニア大学の生物学者、ジャレド・ダイアモンドの命名によれば、ヒ トはコモンチンパンジー、ボノボと並ぶ第3チンパンジーに過ぎない。ヒトは類人猿の一員であるという生物学的事実を無視して、私たちは、もはや人間を語る ことはできない。

  が同時に、ヒトがチンパンジーやゴリラとは明らかに一線を画する存在であることも自明であ る。では、ヒトが生物学的には「一介の類人猿」でありながら、高度な精神と言語と社会組織をもつ「特別な類人猿」であるというギャップをいかに埋めるの か。人類は、いつ、なぜ、どのように特別な類人猿になったのか。この問題こそが、21世紀の人間研究におけるもっともスリリングなテーマであり、本COE の主題である。

  幸い、現代の人間科学は、理論と方法の双方で新しい展開を遂げ、従来にはない研究環境が整っ てきた。ゲノム科学と進化生物学は、いまや生命現象を理解するためのもっとも基本的な理論的枠組みと分析ツールを提供する。かたや、認知科学や言語科学 は、伝統的な文科系の枠組みを越え、自然科学の手法を積極的に取り込みながら進展を続けている。これらが合体した、進化認知科学、あるいは進化心理学は、 欧米を中心にこの10年間に飛躍的な発展をとげている。本COEの目指す拠点形成も、この世界的潮流に沿うものである。

  本COEでは、総合文化研究科をベースにするが、理学系研究科、人文社会系研究科、農学生命 科学研究科、付属病院、総合研究博物館、情報基盤センターのスタッフと連携しながら、オール東大で上のテーマに取り組む。そして、文理の枠を超え、グロー バルな視点を備えた次世代の人間科学者の育成を目指す。各分野の研究者が、単に名前を連ねるのではなく、真に領域を融合し、21世紀型の統合人間科学を創 成していく所存である。